無限壁破り駆動開発 <colspan=∞>

テーマは北海道, オープンデータ, Web技術, HTML5, d3.js, カメラ, 韓国語, Javascript, Ruby, Python

発明家 寺垣武さん訪問記

まえがき

2013年3月9日、発明家の寺垣武さんにお会いする機会をいただき、お話を伺いました。

寺垣武さんは元生産技術者でありながらも、定年後に独学で音響を学びはじめ、歪みを極限にまで抑えた究極のレコードプレーヤと、どこから聴いても同じように聞こえる究極のスピーカーを発明されました。地味でただのガラクタにも見えるそれらの音響機器に隠された秘密と、それらが日本の産業に投げかける問いをわかりやすくお教えいただきました。 寺垣武さん現在90歳。現在も自宅で研究を行なっていらっしゃいます。年齢を感じさせない白熱したお話にあまりにも感銘を受けたため、私は途中から一心にメモを取り始めました。 ものづくりのあり方を問う、とても貴重なご講演でした。

その講演の内容をここにに記します。

f:id:colspan:20130310120539p:plain

講演内容記録

私はオーディオが専門ではない。生産技術者である。 だが、オーディオテクニカを巻き込んで音響機器を作り、それらを三越劇場で展示をするまでになった。今日は経緯と私の考えを伝えたい。

この世の中は変化しているが、「良く」はなっていない

最近、人間あってこその音楽が、音響、音響メーカーが主体になっている。これは間違いであると考えている。 人間はよく勘違いする。物事が変わることが良いことと勘違いする。だが、必ずしも変わることが良いこととは限らない。 私は戦争に行った。今年で90歳になる。これまでを振り返ると、いつも人間は自分に都合の良い論理を作ろうとすることに気づかされる。 戦時中、浜松で従軍中に甚大な空爆を受けた中を私は生き残った。それは数日間生死をさまようものだった。私は亡くなった戦友の下にいて助かった。そのような経験は、恐怖というものの感覚を越え、人間の考えを全く変えてしまうものである。

この世の中はいつも変わっているが、良くはなっていない。 私は新聞雑誌に200回くらいでているのだが、これらの記事を読むたびに、人々は自分の都合の良いように解釈するものだ、と思わされるのである。(注:記事の過度な脚色を指していると考えられる)

ゴキブリから自然の摂理を学ぶ

この家は古いので、ゴキブリがよく現れる。彼らは人間をあざ笑うように、なかなか逃げない。恐怖を受けないと逃げないのだろう。そこで追い払おうと水をかけるのだが、彼らは水圧に逆らって瀬戸物にへばりつくのだ。その足には吸盤みたいな仕組みがある。この原理はまだ良くわかっていないし、人間には作れないものだ。 自然の本能はすごい。ゴキブリの足のような些細なことにも原因があり、だから手段がある。それが自然の摂理なのである。ゴキブリにも神様は平等に手段を与えている。この世の中のどんなことでも勉強になるものがあるのだ。

定年後に始めた究極のレコードプレーヤ作り

私はレコードプレーヤを作った。レコードプレーヤは針先をレコードにあて、音を再生する。声楽は連続する波形から成り立つ。それを記録するには、波形を数値化しなければならない。そこで、私は針先をレコードにあてて音を取り出すカッティングについて知ろうとした。すると、カッティングのことを本当に理解している人がいないことを知った。これにはとても驚いた。 私は良いものではなく、正確に音を伝えるものを作ろうとしている。最終的に6台のレコードプレーヤを3億円もの投資で作った。この巨額のお金はオーディオテクニカが出してくれた。

レコードプレーヤを作り始めた頃、こんなにお金がかかるものだとは考えていなかった。お金に困りはじめてから、電車の中で偶然目にしたオーディオテクニカの中刷り広告が垢抜けていた。こんな広告を載せる会社なら、私がやろうとしていることを理解してくれると思った。私はすぐにオーディオテクニカに向かった。3日通ってすぐ返事がきた。協力してくれることになった。

音響機器メーカーを巻き込んで「究極」を追い求める

私が作ったプレーヤはカッティングの抵抗を減らしたり、様々な工夫をしている。音響を知らない私が作ったために、外見にはムダもあるが、本質は外していないものができたと思う。 社長直轄のプロジェクトとして始まり、私の下には5人の技術者がついた。社長は我々を、何も言わずにずっと見ていた。私は良い音を出そうとはしていない。演奏を正しく刻むことだ。このことは社長に理解してもらっていた。ただ、結果を急ぐのは至極当然のことで、社長もそうだった。だが、私がいなかったらこんなことをする人はいない、業界のためには必要だと説得した。社長は受け入れてくれた。とても素晴らしい人だ。

レコードプレーヤは回転盤の上のレコードに針を当てるが、摩擦抵抗を下げるためにその針先の温度を上げる。レコードが半分溶けた状態で刻む。この温度のさじ加減が難しい。当時、驚くことにこのカッティングの原理を知る人が誰もいなかった。私はこの世で初めて電子顕微鏡で針先の様子を撮影したのだ。 針先はレコードの上を動いている。抵抗が高いと、歪みとしてレコードに残る。針先の劣化はメッキが剥がれてたことではなく、カビが原因だった。こんなことが、誰にも知られていなかった。 古くなったのではなく掃除が必要なだけだったのに、音響メーカーや販売店の担当者の好みでメンテナンスされていたのだ。

音の本質は「物質波」

音は空気の振動だけではない。分子全体が震える物質波だ。 (炭素棒を差し込んだオルゴールと紙で実験。曲げた紙を炭素棒に当てると大音量の音色が聞こえる) 手で抑えると物質波を吸収してしまう。しかし、曲げた紙を当てるだけで音量はこんなにも大きくなる。音は変えることができない。しかし、業界はこのことを知らなかった。だから演奏の音は、業界の好みになる。音を理解していない業界が作り出す音響機器で音の芸術を語るのはおかしい。 私は戦争を経験しているので、正しいことが何かを伝える必要だと考えている。この紙の実験は何度もやってきた。紙には平滑度、凹凸といった物質的な特徴がある。この特徴が物質波を伝える役割を担う。業界はこんな基本の入り口で間違っていた。だが、商売にはなるのである。

「究極」のプレーヤに対する、音響機器メーカー技術者の反応

ちなみに私の作ったレコードプレーヤで、オーディオテクニカは投資を回収できていない。 針先が走る溝を研究した世界で初めてのレコードプレーヤでの実験。実機を技術者に聞かせたときの反応は「何だこれは?」だった。なぜなら、高音ははっきりと・低音はずっしりと、といった当時の常識からはずれた、全く特性のない音だったから。しかし、彼らは皆その直後に「これはただものではない」と思い始めたようだった。時は1980年代後半。皮肉にもレコードが終わる時代に、その仕組みがわかったのである。ただし、プレーヤの寿命は3分。私のしたことは売るための音と違う。だから、売るための音は、それをわかった上で売ることが大事なのである。デジタルで良いことは未来永劫ない。連続値ではないからだ。

原理を知ってこそ、妥協点を見つけられる

悪いことは、悪いことと承知してやることが大事なのだ。 物事の真の目的は、やってみて初めて解る。先のゴキブリの話もそうだ。 この世の中には不動の考えがある。それは人間にとって都合の良いものではない。

技術の究極は、アナログの連続性の延長にある。だが様々な経済的・技術的理由で、妥協せざるを得ない。妥協を決めるために、原理を解ることが必要なのである。 私の部屋には戦争の本がたくさんある。だが、私は戦争が好きではない。ただ、男が何をしようとしているのかを知りたいのだ。溜まったエネルギーを発散させ、落ち着かせているものなのかと考えている。最近も様々な出来事があるが、それらは滑稽に見える。

「究極の」スピーカ作り

私はプレーヤの研究をしたが、音を取り出すことができても、それを再現するスピーカがないことに気づいた。だから作ることにした。 一般的にスピーカは箱に入っているものが多いが、それは間違いである。箱の音になってしまうからだ。

(まもなく量産が始まる帆の形をしたスピーカを指差しながら) 木の板を湾曲させた理由は物質波を直進させるため。振動が伝達される際に、反射が繰り返すのである。モジュレーションが変わりにくい(注:発言どおりではない)。

音楽は元々は貴族のものだった。それが、大衆化されて聞く人が増えると音圧が必要になった。それに応じてバイオリンも弦を緊張させるようにした。楽器は人間の欲望とともに変わってきたのだ。

スピーカを箱に入れるのは間違いだ。現在は音響メーカの方針や、音響機器を楽しむようになっている。人は素直になるべきだ。 スピーカを作るためにはいくつかの変換器が必要だが、私のものは普通のものを使っている。一般的に横に置くのが普通のものを縦においている。それは分子レベルで振動させているので問題はない。物体が振動しているわけではなく、分子が振動しているのだ。紙は湾曲させると分子の配列がまとまり、一体となって振動する。まっすぐであったり、折ったりすると一体にはならない。

バイオリンの音色の違いも物質波で説明できる

この振動の原理は、楽器の素材を必然的に決めてきた。バイオリンには楓が使われる。歴史あるバイオリンが作られた頃、物流が発展していなかったために、素材の楓は時間をかけて運搬された。その間に虫が寄生し、その微粒子が入って内部が複雑になった。それが乾燥した素材に、丁寧に時間をかけて何度もニスを塗るのだ。バイオリン職人は、経験で楓の最適な伐採時期まで知っている。下塗りだけでも一ヶ月かける。だから高級なバイオリンは音が違うのだろう。この世界は歪の世界なのだ。

技術者は謙虚であるべき

これらのプレーヤやスピーカーには2億かかっている。だが生産はしない。それでも何らかの形で文化として残したいと考えている。

プロダクションエンジニアだった自分がこんなことをやるのは、能率に偏り過ぎた罰じゃないかと考えている。人が感動するかどうかを決めるのは能率ではないのだ。ただし、本来能率とは無駄をとることである。音楽とは非なるものだが、理論が間違っていなければそれは音楽的だと感じている。

過去に、上野の美術館で長刀の展示を見る機会があった。どれくらいまっすぐか測ってやろう、と思った。だが、実物を前にするとそんな不遜な疑いは吹き飛んでしまった。あまりにも真っ直ぐなのだ。どうしたら作れるのか、私は考えた。反らない刀のために、あえて反りを与えるのかもしれない。その技法と時間の投資が見る者に伝わると、不遜な疑いは吹き飛ぶ。人間にはそういうものが必要なのだろう。

単純こそ明快で、付け足しがあるとダメになる

人間は、わかったつもりになる。それが危険だ。実際にはわかっていない。 実態をわかっていない。わかることが大事。やってみると、わからないことが多いことに気づかされるのだ。

私はピアノの足の研究をしたことがある。ピアノを移動したら音が変わることに気づいた。ピアノは足を通して床に物質波が入るのだろう。その床の状態によって音が変わるのだ。同様に、バイオリンを演奏するときにもその物質波は演奏者の骨を通り、床に伝わる。それが聞こえる音を変化させる。

芸術は人間が主体となるものだ。微妙なところがある。例えば、ピアノを「良い音」にするためには弾き込むしかない。物質波は単純な調律ではよくならないのだ。

音響について関わってから、人にはいかに先入観があるかに気づかされた。単純であることは真理に近づくことである。単純こそ明快で、付け足しがあるとダメになる。音楽は人を感動させるものである。

経験の積み重ねに向き合う

素材の選択は経験的なものだ。年月の長いものがよいことは理屈では説明できないのかもしれない。 しかし、そこには厳然たる歴史がある。そのプロセスが大事なのだ。最近は結果だけを求めるから、メーカーは実態をわかっていない。それは良くない。 古いことの積み重ねがあることが大事。長刀がよいものかどうかはわからないが、それが醸し出す雰囲気は人々を圧倒する。積み重ねはとても大事なことだ。

最近は何につけ理屈を用いて、説明しようとする。納得させようとする風潮がある。しかし、それでもわからないことはある。 我が家のゴキブリには殺意を感じる。本能だろう。だが、その虫一匹でもとても勉強になる。

「寿司も感性。音も感性。」寿司ロボットで音響機器メーカーへの恩返し

私は寿司ロボットを作ったこともある。くだらないものだが、実際は相当苦労している。最初はおむすびを作ろうとした。おむすびは満腹になればよいものだが、寿司は食べたくなくても食べたくなるファクターが大事だ。7000万個を握った羽田の寿司職人に聞いて、心地よいシャリの定量化をした。箸で挟んで7秒で折れる。それが口の中で崩れるご飯の感覚と同じだった。 私は寿司ロボットをオーディオテクニカに提案した。だが誰も賛成した人はいなかった。そこにレコードプレーヤに協力してくれた社長は言った。 「寿司も感性。音も感性。」 社長がプロジェクトを押し通した。結果は大成功だった。オーディオテクニカはこの寿司ロボットでレコードプレーヤの投資以上の利益を得ただろう。

技術は人のためであれ

私のやることに一貫性はない。だが、人のためである点では一貫している。人に向いていなければ、存在理由はない。それが感性につながることは間違いない。

あとがき

寺垣さんは終始熱弁をふるい、12名の我々一人一人に語りかけていました。3時間のあいだ、水を一滴を飲まないほどでした。我々は皆、その熱い話に引き込まれていました。 「90歳になって、足が悪くなってしまった」とは言うものの、まだまだ現役でいらっしゃいます。

教訓

  • 自然の摂理、原理を理解しようとする
  • 歴史や経験を大事にする
  • 物事に対して謙虚に向き合う
  • 人にとって都合の良いことではなく、正確であることにこだわる
  • 人のための技術を追い求める

これらは当たり前のことであっても、実践することはとても難しいことです。 寺垣さんが追い求めてきた崇高な理念を、どうやったら受け継いでいけるのか、真剣に考える機会になりました。

ソニーを倒したサムスン、さらなる敵に立ち向かう

日本のソニーはもう過去の敵。我が国のサムスンはアップルを倒しに向かう。そんな韓国の記事に出くわした。

소니 누른 삼성, 더 큰 적을 만나다(原文)

自国愛に満ちた記事であんまりいい気持ちで読めないが、事実は事実として冷静に受け止めなければいけない部分もある。
むしろ、普通の韓国人は日本の企業のことをこう考えてるんだろうなぁ、と受け止めるべきかもしれない。
ソニーが敗者であることは、この記事が取り上げる内容が事実であるから寂しい限りである。

[要約]

  • ウォークマン神話
    • 井深の創造性・先見性 (他人に迷惑をかけず音楽を持ち歩いて聞けたらいいな)
    • エンジニアの反対 (そんな小さくて録音できるの作れない、録音機能のない機械なんて売れない)
    • 市場開拓の困難さ (イヤフォンは補聴器みたいでいやだ)
    • 最初のコンセプトは「音楽を持ち歩く」
    • 日本よりも米国のヤッピー(エリートサラリーマン)の間でヒット 「自分の世界に入れる」
    • 史上初めて「自分だけの家電製品」「誰もが持ち歩く電子機器」になった
    • 和製英語ウォークマン」は最初は笑われたが、最終的に辞書に載るまでになった
    • 以後「ウォークマン」は小型プレーヤーの代名詞に
    • 3億台以上出荷。Made in Japan、日本の先端技術の象徴、日本品質の代表だった
  • アナログからデジタルへの移行に乗り遅れたソニー
    • アナログ時代の"名品"の未練にとらわれ、商機を逸すること多々
    • ブランドに対する過信から、MP3や携帯電話を軽視しすぎた
    • MDに固執、MP3をあざ笑った経営陣
    • 簡便さを求めた消費者を無視して"音質"に突き進んだ
    • 先端事業よりもソフト・コンテンツ分野に事業を多角化
    • ソニーは当時のサムスンを「ただの部品企業」と評価していた
    • ソフトに注力しすぎ、ハードウェアへの投資がおろそかに
      • テレビはシャープ、カメラはキヤノン、家電製品は松下に奪われる
      • 液晶パネルを自社生産できずシャープやサムスンから調達、競争力を失う
    • 多角化の副作用で各部門に利己主義がはびこり始めた
    • "Innovator's Dilemma"の好例として挙げられる不名誉
    • 初めてサムスンに負ける(2006年テレビ販売量、2007年特許出願数)
  • デジタルに挑戦したサムスン
    • ハードウェア部門を堅持し、テレビと携帯電話に注力
    • 2009年、HP・Siemensを破って売り上げ全世界一位
    • デジタル時代は標準化の時代
    • 標準化された中では技術力の差異はさほど生まれない
    • 重要なのは「速度」
    • 誰よりも早く高性能な製品を出し、追いつかれる間にアップグレードを繰り返す
    • 2004年ユン前会長の"刺身理論"「どんなに高級な刺身も明日には腐る。在庫は致命的である。」
  • 絶対王者サムスン
    • 日本の電気電子企業上位10社の利益を足してもサムスンはその倍
    • ソニー関係者「どうしたらサムスンに勝てる?」、米国小売業者経営陣「真似をしろ」
  • 市場開拓、ソフトウェアに弱いサムスン
    • ソニーのように永遠の1位はない
    • サムスンは今アップルから挑戦を受けている (本当か?w)
    • 既存の市場でキー技術がないまま先行投資と素早い意志決定でもぎ取った1位
    • 英国フィナンシャルタイムズは「サムスンはセールスマシーン」と酷評
    • サムスンにはアップルのような創造性とソフトウェアがない
    • CESでの崔社長「iPadは我々を反省させた」
    • 営業利益はアップルに負けている
      • 売上比較 サムスン136兆ウォン アップル60兆ウォン
      • 利益比較 サムスン39兆ウォンで4兆ウォン アップル18兆ウォンで4兆ウォン
    • サムスンは新市場を開拓するよりも既存市場で集中投資し、価格力と機能で勝負
    • 他社よりも安く、違うものを作る
  • 変わらなければならないサムスン
    • これまでは開拓された道を歩いてきたが、これからは自分で歩かなければいけない
    • アップルに反転攻勢をかけられるか? 道は険しいがもちろんできる
    • サムスンのかつての目標はソニーを破ることだった。誰が実現すると想像しただろうか?
    • "Make different"よりも"Think different"に注力すればきっと可能だ

LinuxでUSB外付けディスクを快適にマウントする

LinuxでUSB外付けディスクをつないでマウントしようとするとき、接続する順番や環境によって各デバイスが/devディレクトリのどこにマップされるのかが一意に定まりません。このため、頻繁に外付けディスクを使うことが前提となる環境において、マウントポイントを自動的に統一することができず非常に不便です。そこでこのエントリでは、外付けディスクのマウントの煩わしさを解決する方法を紹介いたします。

Debianをはじめとして、最近のLinuxディストリビューションで採用されているカーネルでは、接続されているディスクを、接続順や接続環境に依らずに一意に判別するため、画期的な手段を用意しています。 具体的には /dev/disk/ 以下にID,Label,Path,UUIDの4種類からデバイスマップを取得できるのです。

$ ls /dev/disk/
by-id  by-label  by-path  by-uuid

それぞれのディレクトリには各ディスクやパーティーションのデバイスファイルにシンボリックリンクが張られており、ディスクが持つ固有情報をキーとして利用し、マウントに活用することができます。

このエントリでは、利用できる4つのキーのうちUUIDを利用することによって、接続順に依らず自動的に同じ場所にマウントする環境を実装してみます。 UUIDは、Universally Unique Identifierの略語で、様々なデバイスを一意に識別するために利用されるものです。こう表現すると難しく聞こえますが、たいていの場合何も考えなくてもすでに割り振られているIDですから、このIDを有効活用してみましょう。

準備

用意するのは外付けUSBディスクとしてUSBメモリ(SanDisk cruser mini 128MB)と外付けHDD(1TB SATA-USB変換ケース入り)の2つ、接続するPCはDebian lennyをインストールした自作NAS(D945GCLF2 RAM:1GB HDD:1TB)です。 なお、Debianランレベルは2で、Gnome環境やKDE環境の自動マウントは無効になっているものとします。 では、基本編と応用編に分け、実装方法を紹介していきます。

基本編

まず、同じデバイスを同じ場所にマウントをするには、以下の2つの作業を行います。

  1. 各デバイスのUUIDを調べる
  2. UUIDを利用してマウントする

では、順番に確認していきましょう。

各デバイスのUUIDを調べる

まず、各デバイスのUUIDを調べてみます。 まずUSBメモリから調べます。USBメモリをPCに接続し、直後に以下のコマンドを実行します。

$ dmesg | tail -n 22
[428873.472359] usb 5-5: new high speed USB device using ehci_hcd and address 3
[428873.614823] usb 5-5: configuration #1 chosen from 1 choice
[428873.614823] scsi3 : SCSI emulation for USB Mass Storage devices
[428873.621762] usb-storage: device found at 3
[428873.621762] usb-storage: waiting for device to settle before scanning
[428873.621762] usb 5-5: New USB device found, idVendor=0781, idProduct=5150
[428873.621762] usb 5-5: New USB device strings: Mfr=1, Product=2, SerialNumber=3
[428873.621762] usb 5-5: Product: Cruzer Mini
[428873.621762] usb 5-5: Manufacturer: SanDisk Corporation
[428873.621762] usb 5-5: SerialNumber: SNDK4CC8443998600107
[428879.935348] usb-storage: device scan complete
[428879.935348] scsi 3:0:0:0: Direct-Access     SanDisk  Cruzer Mini      0.1  PQ: 0 ANSI: 2
[428879.943847] sd 3:0:0:0: [sdb] 250879 512-byte hardware sectors (128 MB)
[428879.943847] sd 3:0:0:0: [sdb] Write Protect is off
[428879.943847] sd 3:0:0:0: [sdb] Mode Sense: 03 00 00 00
[428879.943847] sd 3:0:0:0: [sdb] Assuming drive cache: write through
[428879.947843] sd 3:0:0:0: [sdb] 250879 512-byte hardware sectors (128 MB)
[428879.947843] sd 3:0:0:0: [sdb] Write Protect is off
[428879.947843] sd 3:0:0:0: [sdb] Mode Sense: 03 00 00 00
[428879.947843] sd 3:0:0:0: [sdb] Assuming drive cache: write through
[428879.947843]  sdb: sdb1 sdb2 < >
[428879.968840] sd 3:0:0:0: [sdb] Attached SCSI removable disk

すると、接続されたデバイスの情報が表示されます。今回のこの表示では、[sdb]という文字列から、/dev/sdbにマップされたことがわかります。また、このUSBメモリのパーティーション情報を得られ、/dev/sdb1, /dev/sdb2がそれらに対応しているということも下から2行目の情報で判断できます。 なお、2つのパーティーションが認識されていますが、製品によってパーティーション構成は異なるので、適宜読み替える必要があります。今回の製品はsdb1のみをデータ保存領域として利用しているものなので、sdb1をマウント対象とします。

では、この/dev/sdb1がマウントしたいパーティーションだということがわかったので、このUUIDを調べましょう。といっても特別な作業は必要ありません。 接続してから/dev/disk/by-uuid/のファイルリストを見てみます。

$ ls -al /dev/disk/by-uuid/ | grep sdb
lrwxrwxrwx 1 root root  10 2008-11-15 16:34 3B69-1AFD -> ../../sdb1

3B69-1AFDというシンボリックリンクが/dev/sdb1に向けて張られていることがわかります。 この3B69-1AFDという文字列が今回試すUSBメモリのUUIDです。 仮に、接続順などの関係でデバイスが異なる場所にマップされても、この/dev/disk/by-uuid/3B69-1AFDというシンボリックリンクが適宜リンク先を張り替えてくれるので、マウント時のデバイス名の代わりにこのシンボリックリンクを指定するようにすれば、デバイスのマップ名をいちいち調べ直さなくてもよいことになります。

ちなみに、UUIDのほか様々なパーティーション情報を取得するコマンドにvol_idというものがあります。

$ /lib/udev/vol_id /dev/sdb1
ID_FS_USAGE=filesystem
ID_FS_TYPE=vfat
ID_FS_VERSION=FAT16
ID_FS_UUID=3B69-1AFD
ID_FS_UUID_ENC=3B69-1AFD
ID_FS_LABEL=*****
ID_FS_LABEL_ENC=*****
ID_FS_LABEL_SAFE=*****

この結果からもID_FS_UUIDフィールドの値、つまり3B69-1AFDがUUIDであることを確認できました。 ほかにも、ファイルシステムFAT16であることなど、マウント時に有用な情報が得られるので、こちらのコマンドも覚えておくと便利かもしれません。

UUIDを利用してマウントする

UUIDもわかったところで、実際にマウントをしてみましょう。 まず、マウントポイントを作成します。(要root権限)

$ sudo mkdir /mnt/usbdisk1

作成したマウントポイントにUSBメモリをマウントします。 ファイルシステムvfatを指定し、書き込み権限を一般ユーザにも与えるためにumask=000を指定することにします。(要root権限)

$ sudo mount /dev/disk/by-uuid/3B69-1AFD /mnt/usbdisk1 -t vfat -o umask=000

エラーが出なければマウント成功です。 上記のmountコマンドをスクリプトか何かに保存しておけば、いちいちデバイス名を調べる必要がなくなるのです。(ちなみにmountコマンドの-U オプションでもUUIDを利用したマウントができますが、結果は同じです ) では、dfコマンドでマウント結果を見てみましょう。

$ df | grep sdb
/dev/sdb1               125216     99888     25328  80% /mnt/usbdisk1

問題なくマウントできました。 他のUSB外付けディスクのUUIDについても同様の方法で調べ、すべて把握しておけば、いくつどの順番でデバイスを接続したとしても、どこにマップしているかを調べる必要がないので、2回目以降のマウント作業はとても便利になるでしょう。

応用編

基本ができたら、autofsというツールを使ってさらに便利な環境を構築してみましょう。 autofsは、マウントオプションなどを事前に登録しておけば、マウントとアンマウントをファイルアクセス要求に応じて自動的に行うツールです。autofsの設定ファイルにUUIDを活用するのです。

autofsの導入

Ubuntuをはじめとした最近のディストリビューションにはautofsのパッケージが用意されているので導入は非常に簡単です。(要root権限)

$ sudo apt-get install autofs  # Ubuntuの場合

uuidをautofsに登録

インストールが完了したら2つの設定ファイルを書き換え、autofsにUSB外付けディスクのUUIDを登録します。(要root権限)

$ sudo vi /etc/auto.master   # マスターファイルに /misc ディレクトリへのマウントを行うよう設定
/misc   /etc/auto.misc  # この行のコメントアウト"#"を外す

USB外付けディスクのUUIDはauto.miscに登録していきます。(要root権限) なお、マウントオプションは適宜パーティーションに応じて変更する必要がありますので注意してください。

$ sudo vi /etc/auto.misc
cruzermini      -fstype=vfat,umask=000          :/dev/disk/by-uuid/3B69-1AFD # Cruzer mini
exthdd0         -fstype=ext3            :/dev/disk/by-uuid/a649dea8-d1fe-444a-83a4-ae44c40b1db9 # 1TB HDD SATA-USB外付けケース入り

ファイルの編集が終わったらautofsを再起動します。(要root権限)

$ sudo service autofs restart

設定が正しく反映されているか見てみます。

$ ls -al /misc/crusermini /misc/exthdd0
/misc/cruzermini:
total 47696
(省略)

/misc/exthdd0:
total 28
(省略)

UUIDを指定して自動マウントを行うことができました。 このようにしておけば、接続順を気にせずに固定のマウントポイントでUSB外付けディスクにアクセス可能です。

なお、autofsは一定時間のアクセスがない場合、自動的にデバイスをアンマウントしてくれますが、取り外すときには必ずdfコマンドでマウントされていないことを確認してから取り外すようにしましょう。 アンマウントされていない場合は、root権限でumountで手動アンマウントし、取り外せば問題ありません。

以上、UUIDを利用したUSB外付けディスクのマウント方法をご紹介しました。 もちろんUUID以外にもラベルやデバイスIDを使うことでも同様のことができます。

この方法は、Linuxでやっかいだった外付けディスクのマウントの煩わしさを鮮やかに解決してくれます。 是非、一度は試されることをお勧めします。